初体験! 飛行機事故!

私の本業はパソコン関係のハードウェア屋さんである。この会社、本社が台湾にあって、毎年旧正月の終わりに新年会を開いている。(台湾では各種行事は旧暦でやるんじゃよ)
毎年、私はこの新年会に呼ばれているのだが…本社で人気者だから呼ばれているとか、年頭教書演説かます為に新年会に出席している訳ではない。実は新年会というのは口実で、世界各国に散らばるウチの系列会社の面子を一気に集め、その席で大社長が
「おまえン所は今年幾らやるんじゃぃ?」
と脅しをかけるのが真の目的だったりする。毎年私はわが社の社長の通訳としてこの会議に参加、ついでに新商品の開発状況確認や新製品の企画提案などを行っていたりする。

と、言う訳で…今年も台湾新年会に参加してきましたよ。

2/13 朝
AM 7:36のスカイライナーに乗って成田に向かう。今回の便は普段使っている中華航空では無く日本アジア航空(JAA)。私は別にアジア系の航空会社だったらどこでも構わない#1ので料金の安い中華航空を愛用しているのだが、ウチの社長は基本的に飛行機が嫌い(墜落したら助からないから)なので、事故率が低いであろう日本企業の航空会社しか乗りたがらないのである。
で、空港でチェックインをしようとしたら…あっさり迷った(涙)#2
#1 以前、あるアメリカ系の航空会社利用した時、人が呼んでもシカトをかまし、ビールを頼んだのにオレンジジュースを持ってきたスッチーにぶち切れた事がある。サービス業はアジア系の会社に限るぜ!

#2 中華航空はエスカレーター上がってすぐに受付カウンターがあるのだ。従って私は成田の第二空港にどの航空会社がどのような配列で入っているか全く記憶していない。

さて、実はこの後台湾到着予定時刻30-50分前まではな〜んにも面白い事は起きていない。
機内食がイイ感じにチャイナ風味(要は、イイカゲン)だったりするのも普通だし。

問題は飛行機が沖縄上空を過ぎた辺りで発生した。

 

私も社長も飯を食い終わってまた〜りとまどろんでいたのだが、その眠りを覚ますかの如く、いきなり機体左側が音を立てて揺れ出した。あわてて起きる私と社長…というか、機内全員狐に摘まれたみたいに左側に注目。
# 私と社長の席は左側窓際。しかも主翼の付け根近くだった
何と形容するべきか…モーターの軸がぶれた時のような異音。その音は1分程度で直ぐに停止した。つまりエンジンストップである。幸いな事に今回搭乗しているのはボーイング747 左右の翼にそれぞれ2機のエンジンを搭載している。極論すると、エンジンが一発止まっても、左右対称にもう一方のエンジンを止めて双発で飛ぶことも可能。(スピードは落ちるがな
#3
主翼後方を見ると、フラップ(主翼後ろの上昇下降を制御する部分)が正しく動作している事が確認できた。飛行機なんぞとりあえず方向舵が動けばそこそこ何とか動くもんだ。(逆にエンジンが無事でも方向舵…特に尾翼が死亡すると御簾高山の二の舞になる)
#3 通常、ジャンボはエコノミーフライトと言って燃料効率の一番良い速度で飛んでいる。確か747は時速800-900kmのスピードで飛べるはずだが、通常はこの速度で飛んだりしていない。逆に言うと2つエンジン止めても全速で動かせばそんなに鈍く飛ぶことは無い。また、ジャンボの離陸速度は確か200-300km/hなのでこれぐらいの速度が維持できればとりあえず空に浮かんでいる事はできる筈だ…と思う。客観的に見て、エンジン一発止まったぐらいではジャンボは簡単に落ちないのだ。

とりあえずいきなり墜落は無さそうなので機内に目を向けると…

1.スッチーがエコノミー席とビジネスクラスを隔離するカーテンを開けている。(おそらく情報伝達を迅速に行う為)
2.ビジネスクラスとエコノミーの間にあるトイレ前にスッチー大集合
3.意外と険しい顔で機内電話を使っている

…あれ?
やだなぁ、
大事みたいじゃないですか? 我々の座っている席からはエンジンの状態が確認できないけど、止めたんだから大丈夫だろ? エンジンカバーの1つや2つ外れたって…
(前の方の席の人)「うわ〜」
何が「うわ〜」だ! 脅かすなよ! おながいします…

しばらくの後、機長のアナウンスが入る。
「本機は順調に飛行していますが、台北到着は無理(本当にそう言った)であると判断し、沖縄那覇空港に着陸します。我々はこの様な事態の訓練も受けており(本気でそう言ってた)、問題はありません」

この様な事態に遭遇した時に、機長が行うべきアナウンスは
1.大丈夫! へ〜き! と乗客を安心させる
2.真実を語りつつも、それが大した事では無い様に報告

このメソッドに従って機長もアナウンスしたんだろうけど…動揺が見て取れる。
「台北到着は無理」という辺りで実は大事ではないかと邪推されてしまうし、飛行機事故の現場に居て「この様な事態の訓練」なんて言ってしまったら当然乗客は「海面に着水して滑り台で降りる」あのシーンを想像する訳ですよ。私なんぞ「まぁ、北海道行きでなくて良かった。北の海なら寒くて死ぬゼ」なんて考えてたしね。

機長…貴方は腕も確かだろうし、実に真面目な人間だと思う…しかし、隠すべき所は隠そうぜ(苦笑)

そして沖縄上陸。
事故機なので速攻着陸許可が下りたらしく、上空で旋回するとかの愉快な催しは行われなかった。無事着陸して数分後…機長アナウンス
「現在、事故部分が修理可能か検査を行っております…」
修理!?
流石技術立国日本の航空会社! この期に及んでエンジン修理するみたいです…って大馬鹿野郎!

エンジントラブルを修理して直すな! 総とっかえだ総取替え! エンジン修理して慣らしもせずに飛ばす気かタコ!
そもそもお前らが出発前点検で手を抜くからこういう事になった訳で(後略)

まぁ、いい。とりあえずタバコ吸わせろ!

結局10-15分後に「修理じゃだめっぽ」と言うきわめて妥当な判断が成され、我々は那覇で休憩を取ることになった。


Vesselの撮影した「壊れたエンジン」図。

拡大するとこんな感じ
その判断が成されるまで、機内は問題の壊れたエンジンの大撮影会に成っていた。私も社長の命を受けて写真撮影を行っている。その際、隣で写真撮ってたバカOLが「アレぐらいの穴だったら塞いで飛べるんじゃ…」等と言う愉快な発言をかましていたが、エンジンの隣で調査する人の縮尺から考えて穴の大きさは少なくても30cm四方。穴の位置から考えてエンジンの一番前にあるブレード(羽ね)が内部から破損しているのはほぼ確実。壊れた破片が中まで入り込んでたら中身壊滅状態かもしれない。その上で穴塞げば飛べる…と思っているなら素敵だ。那覇は多分滑走路それほど長くないし、エンジン2発のジャンボじゃぁ、加速が足りなくてオーバーラン(滑走路はみ出し)もあり得る。折角拾った命を無駄にしたらいかんよネ。

外に出て空港の入国審査の所でパスポートに判子を押して貰う。そう、我々は既に出国した事になっているのだが、何の因果か日本に舞い戻ってきたので「やっぱり、出国ナシ」と言うキャンセルの判子を貰わないと空港ロビーにもたどり着けないのだ。
その作業が終わってから、次の飛行機のチケットと「スマン」の気持ちで急遽用意された「飲食用チケット1500円分」が配布される。
外に出てタバコをふかしつつ社長と雑談。二人とも今まで沖縄に来た事が無い訳だが…こんな形でたどり着いた沖縄の空は非常に美しかった。まぁ、あの時の精神状態だと何でも美しく見えてしまいそうだが。

携帯電話で会社に連絡入れて、本社に到着が遅れる旨の連絡を入れて貰う。
と、同時に次の便がいつ出発するかを確認…19:00に集合とな?
# この時点で2/13のミーティングは不可能になった。
一時間前に空港に入っているとして…4時間ヒマができた。

本当はこのまま台湾到着までの全工程を記載しようかと思ったが、明日会社なので中止!
ざっと話すと、タクシーで那覇の国際通りに行って、市場見て沖縄そば食って、軍物(中古ミリタリーショップ)で帽子買って、社長に「中華人民共和国のヘルメット買え! もしくはグリーンベレーのスーツを制服にしろ!」等と無茶言われたりした。
社長。台湾行くのに本土の軍隊のヘルメットはマズイですよ(苦笑)

最終的に飛行機(JALから回して貰った国内線用の747)で沖縄を出発したのが夜9:15頃。台湾到着は現地時間夜10:30じゃった。初日の日程が完全に潰れた為に最終日(ちょっと観光できるはずだった)も大社長にストーキングされ、出発の30分前まで空港内のスターバックスで特別会議。

JAAさ〜ん、休職保障まだぁ〜(嘘です)