神はだれが作るのか?

かつて私にとってゲイリー・ガイギャックスは神であった。
D&Dを引っさげて未開の荒野であるテーブルトークRPG…いや、RPGと言う分野を築き上げた神である。
その発生以前、テーブルゲームにはウォーゲームと言う駒を使った大戦略みたいなゲームが主流であった。

ガイギャックスは唱えた。
サプリメントよ在れ、
キャラクターよ在れ、
モジュールとシナリオ集は対を成し、生めよ増やせよ地に満ちよ。

そしてその様になったのである。ガイギャックスの書いた膨大な資料を見よ。
ある人は言う。トールキンこそファンタジーの生みの親であると。私もそう思う。そして私はこうも思う、トールキンがファンタジーの親であるなら、ガイギャックスはRPGの神だったと。

しかし、ここで少し状況を知っている方は突っ込む事であろう。
では、D&D以外でガイギャックスの作成した「有名RPG」を挙げよ。

これが…出来ない。私は個人的にガイギャックスを神と崇める人間である。これは誓ってもいい。
しかし、ガイギャックスは神ではあったものの自らの力のみで神になった訳ではないのだ。
そう、あの時期、あのタイミングでガイギャックスがチェインメイルと言うゲームにファンタジーサプリメントを付け加え、TSR社で怒涛の執筆(確認してみるがいい。私が彼を「神」と呼ぶ一端が伺える)を行い、片っ端からRPGの事を定義しまくったと言うところで、彼は神になったのだから。
その作業はまさに創世記の神々の所業に等しい。ガイギャックスは今なおMMORPGで管理者の代名詞として使用されるGM(D&DではDM:Dungeon Master)と言う言葉を定義した。そしてそのGMと言う文字の連なりは意味を持ち、GMが現れた。各種のセービングスロー、モンスターの定義、AC(アーマークラス)と言う概念…今も引きずられる各種の概念はこの時作られた物なのである。正直に言って、この時の彼の功績無しに今のあらゆるRPGは存在し得なかった。
しかし、その時その事を行ったから彼は神になれた訳で、今のこの現代、彼の才気が遺憾なく発揮されたからといって神になれるとは限らない。

神は、自らの力だけで神になるわけではない。
時代の要請、周囲の環境…その他諸々の条件が重なって、神になるのである。


私がガイギャックスを神と崇めるが如く、世の中にはウルティマを作成したリチャード・ギャリオット(通称:ロード・ブリティッシュ)を神と崇める者も居る。彼もまた時代と共に生きた神である。
かのブリちゃん(ロード・ブリティッシュの愛称)の活躍、人柄を知らぬ者は何故、彼がLineageに招聘されて城攻めやるだけで人が集まるかを理解できないだろう。日本で言ったら堀井雄二や鳥山明と一緒にドラクエできるような物なんだがな…
ちなみに私はブリちゃん嫌いだ。最初にやったウルティマでブリちゃん試しに切りつけたらも〜城の兵隊に追いかけられるしブリちゃん恐ろしいほど強いし…キーッ!! おめぇ一人で城ぐらい落とせるだろうがぁっ! 竜だって素手で倒すぞ…
(無論、そういうゲームなんだから仕方ないのだ。ブリちゃんはあの世界最強の存在、ドラゴンも裸足で逃げ出す英雄だから)


そして、現在グラビティー退社疑惑の持ち上がっている「The GM」ヒャック氏もまた、時代と共にあった神であろう。匿名掲示板の誰かが語った。彼はそこまで有能か?
有能かどうかを論じても始まらない。彼はあの時日本サーバーで、あの時のユーザーに対するGMとして「神であった」。そこには彼の個性や独特の顔文字、いきなり3から始まるカウントダウン…これらの行動を含め、更に周囲の環境を含めた場合、彼は間違いなく「神」である。ある年の正月休み…彼が日本サーバーを再起動しに現れたとき、感謝の涙を流さなかった者はシベリアでレンガの積み下ろしの刑を受けるが良い。フレンドリーな対応に心ときめかない者はヨッヘンバイパーの戦車に轢き殺されるが良い。
あの時、あのユーザーとグラビティーと言う会社、ラグナロクと言うゲーム。このどれが欠けてもThe GM ヒャック氏の誕生は有り得なかった。神「ヒャック」は彼が自らなった物ではない。あの時の条件全てが揃って生まれた奇跡なのである。

なので、今のガンホー社にヒャック氏が現れても、神に成れるかは…正直、無理だろう。
俺のスタイル…のGMが神になれるか? それも無理(きっぱり)
ガンホー社が神になれるか?  あ〜無理無理。(マンドクセー)

神に共通する事は唯一つ。その周辺にある全てに愛を注いで居る…あるいはそのプラットホームの為に心底…心血を注いで仕事をこなしたという点である。
ガイギャックスは間違っても仕事の息抜きにスケボーはしない。少なくともそう見える。
彼はシナリオ作成に行き詰まりを見せたら中世ヨーロッパの資料を紐解き、D&Dマガジンの連載のネタを溜め、いきなりサプリメントやモンスターのアイデアを思いつき、片っ端から仕事をしたであろう。
ロード・ブリティッシュことリチャード・ギャリオットもウルティマの設定に煮詰まったら絶対に他の仕事を始めそうなタイプ。

生活是仕事。
寝ている時も仕事を忘れないだろうという情熱。
あるいは、ユーザーにそう思わせる熱気。

形だけ真似してもダメだ。ガンホーさん。
格好をつけてもダメだ、アレス氏。
あなた方からは「熱」が感じられない。